管理栄養士の仕事をしながら、経営者になって3年。

その前には、個人事業主として仕事をしていた期間が長くありました。

最近、会社としていろいろな仕事を人にお願いするようになって、改めて気づいたことがあります。

それは、

「自分の仕事を人に渡すって、こんなに難しいんだ」

ということです。

個人事業主の頃は、全部自分でやっていた

個人事業主の頃は、仕事のほとんどを自分一人で完結させていました。

どんなサービスにするのかを考える。

内容を設計する。

資料をつくる。

相手への伝え方を考える。

実際にサービスを提供する。

そして最後に請求書を出す。

今振り返ると、ひとつの仕事の最初から最後までを、すべて自分の中で組み立てていたのだと思います。

法人化したのは、

もっとたくさんの仕事を受けたい。
もっと多くの方にサービスを届けたい。

そんな思いがあったからです。

でも当然、仕事が増えれば、私一人ですべてをやることはできなくなります。

「自分では当たり前」が、一番説明しにくい

誰かと一緒に仕事をする。

誰かに仕事の一部をお願いする。

会社として考えれば当たり前のことなのですが、私にとっては、ここが意外と大きな壁でした。

なぜなら、今まで提供してきたサービスは、長い間、私自身が考え、経験し、改善しながらつくってきたものだからです。

「ここを見たら、次はここを確認する」

「この人には、こういう伝え方をする」

「この場合は、ここまで対応する」

そんな判断が、いつの間にか自分の頭の中に蓄積されています。

自分では当たり前にやっている。

だからこそ、人に説明しようとすると難しい。

最近、そんな場面がとても増えました。

管理栄養士は「ひとり職人」になりやすい

そして、これは私だけの問題ではないのかもしれません。

管理栄養士という職業は、職場によっては一人配置であることも多く、誰かと同じ仕事を分担する経験が少ない職種です。

献立を立てる。
栄養計算をする。
食事相談をする。
記録を書く。
厨房と調整する。
医療職や介護職と連携する。
対象者に合わせて資料をつくる。

こうした仕事を、一人で考え、一人で判断し、一人で完結させる。

ある意味、

管理栄養士は「ひとり職人」になりやすい仕事なのかもしれません。

もちろん、一人で完結できることは専門職として大きな強みです。

でもその一方で、

「自分がやっている仕事を分解して、人に伝える」

ということには、あまり慣れていないのではないでしょうか。

それが「管理栄養士の仕事が見えない」理由なのかもしれない

最近、私はここがとても気になっています。

もしかすると、これが管理栄養士の仕事が世の中から「見えにくい」理由の一つなのではないか、と。

管理栄養士自身の中では、とてもたくさんの判断をしています。

専門的な知識も使っています。

でも、それを全部ひとまとまりにして、

「栄養指導です」

「献立作成です」

「栄養管理です」

と表現してしまうと、外から見ている人には、その中で何をしているのかがよく分かりません。

だから、

「管理栄養士さんって、何をしてくれる人なの?」

となってしまう。

もしかしたら私たち自身が、自分たちの仕事を社会にうまく説明できていなかったのかもしれません。

「面談」という仕事を分解してみる

最近、Office Nutrieでも、私が今までやってきた仕事を可視化し、ほかの管理栄養士さんと分担する機会が増えてきました。

例えば、一言で「面談」と言っていた仕事。

分解してみると、

・面談前に情報を確認する
・健診結果を入力・整理する
・対象者の課題を考える
・20分間の面談を行う
・本人と目標を決める
・面談後に記録する
・所見をまとめる

実はいくつもの仕事があります。

そして分けてみると、

「この作業には、このくらいの時間が必要」

「ここには、このレベルのスキルが必要」

ということも見えてきます。

つまり、仕事を分解することで、今まで見えなかった管理栄養士の仕事の価値も見えてくるのです。

管理栄養士のサービスを「買いやすく」する

これは、会社の中で仕事を分担するためだけではないと思っています。

管理栄養士のサービスそのものを、もっと社会に分かりやすく伝えることにもつながるのではないでしょうか。

例えば、

「管理栄養士に相談できます」

だけではなく、

「健診結果を整理してくれる」

「食事記録を分析してくれる」

「献立をチェックしてくれる」

「給食業務に必要な書類を整えてくれる」

「従業員の健康相談をしてくれる」

そんなふうに、私たちができることを分けて見せていく。

すると必要としている人も、

「あ、それならお願いしたい」

と思いやすくなるはずです。

専門職にとっては当たり前の仕事でも、利用する側から見ると、名前がついていなければ、そのサービスは見つけられません。

仕事を手放すのではなく、仕事を広げる

だからこれから管理栄養士に必要なのは、専門性を高めることだけではないのかもしれません。

自分たちは何をしているのか。

それは、誰のどんな困りごとを解決できるのか。

どの部分を、一つのサービスとして提供できるのか。

それをもっと細かく言葉にして、見えるようにしていく。

私自身は、人に仕事をお願いする必要が出てきたことで、ようやくこのことに気づき始めました。

自分の仕事を可視化する。

仕事を分ける。

名前をつける。

人に伝える。

そして、仕組みにする。

これは、自分の仕事を誰かに「手放す」ことではない。

管理栄養士の仕事を、もっとたくさんの人に届けられる形にすること。

そして、その一つひとつの仕事にきちんと価値があることを、社会に伝えていくこと。

法人化して4年。

今、会社をつくっていく過程で、そんなことを考えています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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筆者
管理栄養士 石田美枝

株式会社Office Nutrie 代表
健康経営支援、食環境づくり、栄養相談などを通して
「食を通じて幸せをつくる」活動を行っています。